オランダ退職記念旅行②「なんのその」で始まる1日
二日目は小雨。
ホテルの朝食ビュッフェのシステムがいまいちつかめず、
ウェイターさんたちもわれわれには話しかけてこず(空になったお皿は、私達が物を取りに席をたっているときにスッと持っていかれる)、
こちらも目を合わせず、緊張ぎみに過ごした。
それにしてもその食べ物の種類の豊富なこと!
あらゆるパンとチーズとパンにつける素敵な甘いもの がそろっていて、
パンやチーズはサイズが大きければその場でカットして残りは置いていってもよく、
とにかくいろんな場面で余地があり、自由が当たり前に存在しているんだな~ということを予感させる始まりだった。
野菜や卵料理はもちろん、何種類かのハムやソーセージ、さらにおやつ系のパンと果物、スープが数種類etc.
「地球の歩き方」に、
「オランダのホテルの朝食は充実しているので、1日ウォーキングもなんのそのです。」
と書いてあったけど、その通りだった。
来る前は半分疑っていたけど、それからは深く納得して、私たちはその朝食を 「なんのその」 と呼んで大好きになった。
その日はイースターの日曜日で、窓の外を通っていく個人所有とは思えない(黄色いサイドカーみたいなのくっついてる)形の親子自転車をながめながらのご満悦な朝食。
この日はアムステルダムの地理を把握するのが目標で、とにかく歩いた。
(まだまだトラムに乗る勇気がなかった、とも言う。)
駅からの道をまっすぐ、ダム広場に向かって歩く。
一本入ったところが「飾り窓地帯」だと思うとそわそわする。
そうしていると、いきなりすぐに「coffee shop」や「sex museum」が見つかる。
「coffee shop」は喫茶店じゃなくて、大麻が売っているところ。
見ていいのかいけないのかわからずに、遠目にじろじろ見る。
「sex museum」もおもしろいらしい。
駅近だからすぐに行けそう。
ともかく先に向かって歩く。
家も建物も古くて細長くてとにかくかわいい。
運河沿いに長屋みたいな形で立ち並ぶ光景は、信じられないぐらい美しかった。
信じられない。
信じられないよね。
っていう言葉しか浮かばなくて、交替でつぶやいて笑う。
こんな景色あるの?
こんな建物が普通なの?
っていうことを言いたかったけど、ただため息つくしかない。
私が必死で自分を殺して働いている時間もこの建物はずっとここにあったんだなあ。
そして、こういうことを知らないまま(ということにして)生きてきたんだなあ。
ダム広場と王宮に着いた。
観光客らしい人たちがたくさんいる。
この旅のために買った自撮り棒を、いそいそと装着する。
浮かれた顔の写真が撮れる。
なんか楽しくなってきた。