オランダ退職記念旅行①「日本脱出」
ヨーロッパに行くのは2度目(1度目はフランス)だった。10年以上ぶりってことにおののく。
朝早く、空港行きのバスの中で急に調べた情報では(急に調べる)、
「オランダでは食事に期待しないで」とか、
「差別もあります」とか、
「質実剛健の性質」とか書いてあって不安になる。
そもそも、翌朝早いっていうのに、半日かかったパッキングの後、爪をどうしても黄色とピンクに塗りたくてあまり寝ていないからぼーっとしている。
オランダ、楽しいのかな……。
搭乗口で時間を過ごしていると、集まってくるのは大きな……オランダ人? 「オランダ人は背が高い」って書いてあった……。それは臨むところだけれど(私も高いので)、集まると圧倒される。楽しそうにマッサージチェアで遊びながら英語ではない言葉をしゃべっている。これがオランダ語なの? わからん。絶対わからん。これからこういう人たちの中で生きていくってことか……。できるかな。
KLMオランダ航空の客室乗務員の制服が目の覚めるようなスカイブルーでかわいい。
男性もいるし、女性のパンツスタイルもあってカッコイイ。
乗務員さんたち、大きくて(こだわる)、普通に優しいし、同僚と楽しそうに働いているのもいい。忙しいのと、いろんなことにかまってられない感じで通路をゴッゴッゴッゴッと足音鳴らして超スピードで移動していくのも迫力。
簡単な英語のやりとりさえ新鮮でうれしく、日本じゃない世界に少しずつ突入していく。日本脱出。このかんじ、思い出してきた。
Heinekenってオランダだったんだ🇳🇱
もう好きだ。すぐに好きになる。
フライトの途中で頭上の荷物収納のふた(なんて言うの?)がどうしても開かず、乗務員さんも近くにいないしどうしようか諦めようかと思って近くの頭上で同じことをしようとしている男性をじっと見ていたら、近づいてきて開けてくれた。
「開かないの?なんかこのふた固いよねー。僕のところのもそうだったけど。やってみてもいい?」
と言って気軽にさわやかに。背の高い、オランダ人? やさしい! イケメン。
「助けてほしい」って(顔でもいい)訴えるって大事。最近学んでいること。あきらめなくていいんだ。自分だけでしなくていいんだ。
到着後、イケメンは肩にひょいっと小さな女の子を乗せ、大きな荷物を提げて軽やかに降りて行った。
空港直結の駅で苦闘ののち切符を買い、電車でアムステルダム中央駅に到着する。
駅を出た瞬間、海が見えた。大海原ってかんじじゃない、運河みたいな。
船もある。2、3隻、対岸まで渡してる。
対岸には白くて高いオペラハウスみたいな形の建物があって空中ブランコがある。
思わずふらふらと道に出たら自転車にひかれそうになった。
猛スピードの自転車が、自転車専用レーンを走っていた。すごい自転車大国。「質実剛健」がよぎる。スポーツタイプの人だけじゃなく、おしゃれな女の子も母子も父子も男の人もみんな自転車に乗っている。しかもすごいスピード。ひかれそうだけど、ひかれた方が悪いという感じにびびる。
ホテルにチェックインして部屋に荷物を置いて出かける。もう夕方だけど、少し散歩した。
駅の反対側は、街へと続くいわゆる「正面」で、運河があり、古くて大きな教会がそびえていて、すぐに、外国に来たんだなあムードが漂う。街へ向かうトラムやバスも頻発していて、大勢の人と自転車の中に混在していた。
またしても、明日からこんなところで生きていけるのだろうか という気がしてくる。
同時に、運河、教会、重厚な建築物という風景は明らかに私の日常と違っているというのに、
トラム、バス、東京駅みたいな駅、近代的なホテル、雑多な人々の顔、から成るごちゃごちゃはなぜかほっとするものでもあった。
整然としてない、みたいな。
一方向じゃなくてみんなそれぞれにいろんな方向を向いてる。
いつまでも曇天のまま暗くならないサマータイムの感じも、すぐに不安になりかける私をおだやかになぐさめてくれた。