むりむりちゃん日記

私が孤独なのは私のせいではない

離任式前日、卒業生に出会う

めぐりあわせかのように、前日、卒業生に出会った。

梅田でぶらぶら歩いてたら、すいません…すいません! ……先生! と後ろから声かけられた。3月に卒業した生徒2人だった。サッカー部と、野球部。私は卒業式に出ていないから、「もう一生会えないかと思った」と言うと笑っている。

 

こんなことが前にもあった。去年のこれぐらいの時期だった。

大事なスピーチの前日(スピーチ好きやな~)、駅の近くのカラオケ屋で卒業生にばったり会った。1年間浪人していたけど、合格したと言っていた。

 

会うのがただうれしいし、話すのが楽しい。一時期何かを共有した人たちと外で会うのは、説明のいらない安心がある気がする。共同体的な何か。

 

私にとっては複雑な感情のある職場だったけど彼らにとっては母校なわけで、そのファンタジーを壊しちゃいけないって思って気を付ける。でも、彼らが私に見ているものだってファンタジーなのだから、私だってその力を借りているのだろう。懐かしさを投影し、いい感じに見てくれている。

 

せっかくここで出会ったのだから、そこから一歩出て、「来いよ!」と思って少し刺激する。むやみに悪口を喚起しているわけじゃないけど、ためしに水を向けてみる。

「外に出ると自由でしょう?」

彼らは大きく頷きながら笑う。それは私からみたらとても鷹揚でやや物足りなくもある感じ。たとえばくだらなかった校則を、「あれはマジでローカル・ルールだった(笑)」という言葉で消化できてしまうような感覚、根にもたない感じ、人の好さ。

しかしそれこそが、あの学校の気風というか、生徒の雰囲気だったなあそういえば、と思う。

 

「下りの坂道は自転車を降りて押すっていうローカル・ルール、俺らは守ってたし他の先生たちも守ってたけど、〇〇(アメリカ人の先生)は全然守ってなくていつも俺らの横をビュンッて駆け抜けていった。」

と言うので、

「まあ、ジャパンになんかとらわれてないんだよ、きっと。」

と言ったら、

「いや、ジャパンじゃなくてうちの学校にとらわれてないんだと思う。」

って言っていて、いろんなことをよくわかっていた。) 

全国の進学校のどこにでもありふれている「文武両道」 (として有名だった)なんかじゃなく、

  • 知的好奇心を持ち、人を信じ、新しいことをおそれず挑戦すること。
  • 難しいことにこそ奮起し、友達と協力して達成できること。

                          (むりむりちゃん調べ。)

それらの私にはない圧倒的な力とさわやかさが、彼らの大きな魅力だった。

それを実感した立ち話1.5時間(!)@ホワイティ梅田の通路(!!)だった。

 

屈託していて物事にこだわりすぎる私と、人の暗部に頓着しすぎることなく仲間とともにそれらをさらりと流して生きていくことができる彼ら。決定的にも思えるこの差が、学校の中にいた時は切なく辛かった。伝わらないと思ったし、彼らに対して、世の中そんなにイージーじゃないし、一面的なもんじゃないんだぜベイビーって思ってた。

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でもこうしてお互いに外に出てしまえば、私は彼らの屈託のなさを若さと強さだと感じるし、前向きな姿勢ややさしさを、頼もしく感じる。私も彼らも同じように、この世界の一部に過ぎないのだ、と思うことができる。

「地域のトップ校」(として有名)という称号を、私は、中にいるときはさんざん揶揄(心の中だけです)していたけど(「〇〇地域のなかでトップっていうだけじゃん…」)、久しぶりに会った私に嬉しそうに他の同級生たちの決めた華々しい進路を次々と教えてくれる様子は全然憎めなかった。苦戦しながら到達した彼ら自身の経験もあわせて、自分で決めた目標はたとえ高くても努力して手に入れることができるのだという神話みたいなことを、事実として信じている。その環境にあること自体に夢があるし、それだけで大人が子どもに願う以上のところに到達している気がする。あの学校で彼らが手にすることのできる幸福はそれのような気がする。(というか、学校が彼らに経験させてもらえる幸福、とも言う。それはお互いに負っていること。)

  • 自分がのぞんだことに向かって遠慮せず人目を気にすることなく努力することができること。
  • それを成し遂げている友がいること。

経済的環境や自分自身の能力、努力の大きさとはまた別の(まったくの無関係とは言わないけれど)ところにあるようなもの。つまり、自由に夢を持てること。

話している時の彼らの高揚と幸福そうな様子には、そういう経験を経たことによる自信と、信頼があったように思う。周囲への。自分への。大げさに言えば、生きることへの。

これは尊いな。これからいろいろとなんでも自由にやっていこうと思っている私にとっても希望であるし、そうそう、そうだよなあと、彼らに感染したみたいに思うし、そう思っていた流れの中で今、彼らと会ったことも偶然ではないという気がしている。

「大学の授業とか勉強とか楽しみだけど、今、人との交流でもいろんな知的な話とかをしたいんです」という言葉は、まだ多くの人と出会っていない四月の初めの感慨としてよくわかるし、まったく親しみのある渇望で、可愛いすぎた。ようこそ! ようこそ!!

 

名残惜しい別れ際、「また会うかもしれませんね!!」と普通に言うので笑う。梅田のその道を私もしばしば歩いているし、たしかに会うかも。

「引っ越したいんだよね~神戸とかに。」と言ったら、

「神戸方面にもいっぱい進学した人たちいるし、会うかも!!!」と私以上にうれしそうに言うからかわいい。まるで地元でいつも簡単に友達に会ってきたような感覚で、大阪も神戸のこともとらえているのがおかしい。

でも、それを単なる夢にしないような、本気で叶えてくるような、今日の実績もあるし(笑)、見つけたら声かけてくるし(これ大事!)、何せ望んだことは叶えてきたからそういう確信みたいな感じがかわいいし頼もしいし、そうだろうなと思って私はそれに乗っかるような気分でそのまま手を振って別れた。

 

あの人たちってもしかして……「優勝取りにいく属性」だったんじゃない??? 羽生意識の。……私と同じじゃん!! 

今気づいた。そうだったのか。たしかに。ふにおちる。大会を設定して自分の力尽くして努力し、優勝つかみに行くタイプ。同じじゃん。マジか……。彼らと私って、ぜんぜん違って相容れないぜベイベーって思ってたけど、まさか同じ種類に属していたとは。だから気が合ったのか……な?! まあいいや。

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(ただし、私は別れた瞬間から帰宅してもずっと、あー悲しい。やっぱり連絡先交換しとけばよかったかなあせめて写真でもとったらよかった、とうじうじ思っている。彼らは瞬間で忘れている。それでいい。それがいい。)

 

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