「オランダ退職記念旅行」に行くまで
なぜオランダ???
ざっくりこの5年間、海外に行きたいと思うことがありませんでした。そういう自分の無欲求なことに気付いたのは3年ぐらい前で、ちょっとやばいなと思ったりはしていました。
働き始める前に行ったタイが最後で、それ以来どこにも行っていないなんて、
高校時代にやっていた英会話のこととか、
大学でやっと行くことができたホームステイとか、
そのときのすごくいい思い出が今の自分を作り上げているもののひとつであることとか、
そもそもの外へのあこがれや興味が自分のアイデンティティのひとつであったことなど、
すべてまるっと無いことにするかのような生き方をしてきたんだなあ。
すごくしたいんだけどやめておく。その欲求も持たないようにする。封印みたいな。
そう思うと自分の殺してきたものの多さに驚く。
この期間、海外旅行に誘われても行かなかった。モロッコとかタイとか。
とにかく毎日疲れていたし、行く前から、帰ってきた後の疲れとかその後の仕事とかを想像してもう疲れていた。先の予定を考えたり調整したりするのがしんどかった。
それでこの狭い狭い街の中にだけ居て、文句ばっかり言っていたな。
(あと、「海外旅行届」なるものを職場と教育委員会に出さなきゃいけないらしいって話も地味にめちゃくちゃ嫌だった。期間とかスケジュールとか滞在先とか。だれにも動向を知られたくないし、何があっても連絡してほしくないから外国に行くっていうのに。)
何してんだ自分。
それで、「行く」って言ったのにやっぱりやめるというひどいことをした友達もいる。呆れて、でもまだ付き合ってくれている。
とにかくゾンビだった。ゾンビであることを自分によしとしていた。
それで、このまま意志を持たないで生きるのは嫌だと自分でも思って、『地球の歩き方』を買いに行った。本を買ったら本当に行ける気がした。
どこにしよう?
そこで思い出したのが、2012年の夏に上野の森美術館(東京)で「マウリッツハイス美術館展」をみたこと。そこで、フェルメールさんと、ミッフィーちゃんと、ストロープワッフルを知った。
『地球の歩き方』には、オランダはベルギーとルクセンブルクと一緒にのっていた。
そこでアムステルダムの「飾り窓地帯」*1のことを知った。どきどきした。
これは絶対に行きたいなー、私が行くところだなーと思った。それは、大学院で樋口一葉を研究していて、吉原をはじめ日本の公娼や私娼制度を調べたり、そのなかでフェミニズムについて勉強したりしたことが、私の原点でもあったから。
合法化されてるってどうなってるんだろう。日本では合法化されていないだけで闇の中で存在していて、あるのに「ない」ことになっている。見ないで済むことになっている。
- アムステルダムではどうやって「見える」形にしているんだろう。
- そこで働く女の人たちはどんなふうにいるんだろう。
こうして強くオランダにひかれた。やっとここまで来た。
そのあと何度か本当に行こうと思ったけれど、やっぱり新婚旅行でもないかぎり一週間のヨーロッパ旅行なんて行けない気がした。
……まだ言ってる。
……まだ行かない。
なんか……なんで?
わかんね。
受験生の担任とか、異動とか、担任とか、担任とか。かなあ?
というか、「行けない」という思い込み。それも病。
それで今回、ついに新婚旅行ならぬ「退職記念旅行」に、日本を飛び出したのです!3年前の『地球の歩き方」を持って!